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日本人はなぜ出世を嫌がるのか--残業代と「名ばかり管理職」から考える①

残業代が出ない課長

「出世したがらない若者が理解できない」「給料を上げたいなら出世するしかないだろう」
最近そんな趣旨の記事を読んだが、日本で出世が敬遠される最大の理由は、出世しても割に合わないからだ。
その象徴が、課長以上には残業代が出ないという慣行である。

日本の管理職志向は世界で最下位

パーソル総合研究所の調査では「現在の勤務先で管理職になりたい」と答えた人の割合は、2019年のアジア太平洋14カ国・地域で日本が21.4%、2022年の18カ国・地域でも19.8%と、いずれも最下位だった。
インドやベトナムは8割を超え、中国も7割台。
台湾は日本より高いが下位グループに入る。
新興国ほど昇進意欲が高く、成熟した国ほど低くなる傾向はある。
オーストラリアやシンガポールも低めだ。
それでも日本の低さは突出しており、国の成熟度だけでは説明がつかない。
ただし、この調査はインターネット調査であり、管理職の定義や待遇も国ごとに異なる。
数字は目安として見るべきだが、日本が最下位という傾向は2回の調査で一貫している。
つまり、日本には「管理職になると損をする」と感じさせる固有の構造があると考えるのが自然だ。

欧米と日本では「課長」の中身が違う

「アメリカでも管理職は残業代が出ない」とよく言われるが、話はそう単純ではない。
米国では、管理職でも一定水準以上の給与と採用・解雇・評価といった実質的な職務内容という要件を満たさなければ、残業代の対象になる。
欧州でも労働時間規制の適用除外は自律的な決定権を持つ経営幹部に絞られている。
中国や台湾、韓国にも管理職や裁量的な職種向けの労働時間の特例はあるが、いずれも裁量や待遇とセットで運用される前提だ。
欧米では高い報酬と裁量を得る代わりに成果への責任を負うという取引が、管理職との間で成立している。
一方、日本の課長は現場の延長線上にある。
毎日20時まで働き、休日も電話に対応しているのに、残業代はない。
では採用や解雇、人事評価の決定権があるのかと問えば、それもない。
そんな「あるある」は多くの職場で聞く話だ。
現場の実務を抱えたまま責任だけが増え、採用や解雇、予算の権限は役員が握ったままというケースは珍しくない。
勤務時間も自由に決められず、残業の多い係長より手取りが低いこともある。
これでは「割に合わない」と感じるのも当然だ。
加えて、2000年代以降は課長のプレイングマネージャー化が進んだ。
働き方改革で部下の残業が減ると、そのしわ寄せも課長に集まる。
求められる成果は変わらず、責任だけが重くなっている。
2026/10/10 労働部