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CRM導入を渋る企業が勘違いしている「AI魔法論」の終わっている現実②

近隣国のCRM事情

まず、SaaSビジネスの発祥地であるアメリカ市場を見てみよう。アメリカでは全企業の約75%がすでに何らかのCRMを導入しており、さらには導入企業の約40%が「90%以上という極めて高いシステム定着率」を達成しているという驚異的な報告がある。
さらに、エンジニアに頼らず現場担当者自身がシステムを構築する「ノーコード」の普及も凄まじい。
アメリカの大規模企業の41%以上がノーコード開発を公式な社内推進プログラムとして制度化しており、業務プロセスのデジタル化は現場主導で高速に回るフェーズへと突入しているのである。

一方で、急速なデジタル経済成長を遂げてきた中国の現状はどうか。
中国の登録企業数は約5300万社という数に達するが、現時点でのCRMの浸透率は意外にも15%未満に留まっていると報告されている。
欧米と比較すると現在の導入率は低いものの、これを逆の視点から見れば、残りの85%という莫大な未開拓市場が存在することを意味している。
実際、現在の中国のCRM市場は凄まじいスピードで成長を続けており、今後はAI機能を標準で組み込んだ次世代システムの普及が爆発的に進むと予測されている。

次に、ITインフラが世界トップクラスで発達している韓国の事情である。
韓国の企業文化は、伝統的にERP(企業資源計画)システムの導入には熱心であり、基幹業務のデジタル化は高い水準で進んでいる。
しかし、グローバル市場全体で見るとERPとCRMの市場規模の比率は概ね「1対1」で拮抗しているのに対し、韓国市場においてはなんと「8対1」と極端なまでにERP投資に偏重しているというデータがある。
内部管理は完璧に統制されていても「顧客との直接的な接点」を管理するCRMへの投資を長らく軽視してきた歴史があるのだ。
しかし近年、複雑化するB2B営業での限界を痛感した企業を中心に「ERPだけでは売上は作れない」という危機意識が広まり、クラウドベースのCRM導入率が急激な上昇カーブを描き始めている。

そして、ビジネス環境において日本と似通った部分が多い台湾の中小企業(SMB)現状である。
台湾の中小企業におけるCRM導入率は現在でも30〜40%程度と推計されており、過半数の企業が導入を見送っている状況にある。
驚くべきことに、未導入企業の多くはいまだにExcelの試算表を手作業で更新したり、私用のLINEのグループ機能を業務に流用して顧客管理を行ったりしているという。
これは、担当の優秀な営業マンが退職してしまえば、重要な顧客関係や経緯がすべて会社から失われてしまうという企業存続に関わる致命的なリスクを孕んでいる。
そのため、AI機能が全面に組み込まれた低コストなクラウドCRMへの移行推進が、台湾のビジネス界全体で焦眉の急として取り組まれている。

AIが爆速で動く条件

私が参加したZoholicsの会場では、実際に最新のAIを活用した働き方のデモンストレーションが披露されていた。
最新の生成AIであるClaudeとのシームレスな連携や、Zohoが独自開発したAIアシスタント「Zia」を用いた膨大なデータ処理のスピードは、文字通り「爆速」であった。
人間が時間をかけて集計・分析するようなタスクを数分で完了させてしまうのだ。
ここで私たちが絶対に勘違いしてはならない重要な事実がある。
AIが爆速で魔法のような処理を正確に行えるのは、「事前にCRMなどの専用システムによって、参照すべき元データが完璧に整理・構造化されているから」に他ならない。

日本では長らくIT投資を渋り、根本的なシステム導入から逃げてきた企業が多い。
その結果、現場ではどういう現象が起きているか。
そこには必ずと言っていいほど「天才・網羽さん」のような、非凡なVBAマクロのスキルを持った孤高の使い手が降臨し、社内で無双状態に陥っているのである。
網羽さんが作り上げる複雑なマクロは、日々の業務を辛うじて回してはいる。
だが、そのマクロの内部は網羽流の神がかった暗号のようなコードで書かれており、網羽さん以外の誰にもメンテナンスができないという極限の「属人化」を生み出している。
さらに言えば、どれほどの天才網羽さんであろうとも、手作業の延長線上にある以上、ヒューマンエラーからは決して逃れられない。天才だって間違えるのだ。

結論:データ構造化の問題から逃げてはならない

私がトラック2で受講したセッションでも、登壇者はこの点を何度も口酸っぱく指摘していた。
「企業内に蓄積されたデータがきちんと構造化されていなければ最新のAIツールを導入したところで業務の効率化など絶対に不可能である」と。
社内のファイルサーバーの奥深くやSharePointの複雑な階層構造の中に、フォーマットの異なるファイルが無秩序に分散している状態。
このような「データのサイロ化」が放置された劣悪な環境では、どれほど優秀なAIであってもデータを正しく読み解くことはできず、全くと言っていいほど役には立たない。

「AIを活用して業務を爆速化したい」という要望は、今や色々な会社で聞かれる。
その夢を現実のものにするための確実な第一歩は、最新ツールを闇雲に契約することではない。
まずはCRMなどの業務システムをしっかりと導入し、散らかったままのデータを一カ所に集約させ、正しい形で整理整頓するという地道な作業から逃げないことだ。
それこそが、悪天候の横浜を耐え抜き、身動きの取れない通勤ラッシュに揉まれながら辿り着いたZoholicsで得た最も価値のある確信である。

2026/09/27 CRM